サムライ榊原健太郎氏アップデート

sサムライインキュベート代表の榊原健太郎氏は2014年の5月、スタートアップ大国イスラエルに進出。それまでの日本国内での投資事業と並行して、イスラエルと近郊国のスタートアップ企業への投資を開始しました。

イスラエル上陸後の進行状況

 ―― イスラエルにいらした当初、5年間で100社のスタートアップに投資しようという目標を掲げていらっしゃいましたが、その後の進行状況はいかがでしょうか。

現在までに投資した企業は30社です。この30社でファンドを使い切って、まだ目標まで残り70社あるのですが、今はそのための新しいファンドを作っているところです。このファンド作りは来年の3月くらいまでかかります。日本の大手企業も参加を見込んでいます。

―― その間、榊原さんは日本にいられる時間が多くなると思いますが、現地は大丈夫ですか。

片腕となってくれている従業員を含めて、現在イスラエルには6人の現地従業員がいますので大丈夫です。

―― 投資した会社は、その後どうなっていますか。

ファンドは10年期間がありますし、シードの投資だと結果が見えるまでには時間がかかりますので、まだまだこれからです。

強まった日本とイスラエルの関係

―― 3年前と比べて、日本とイスラエルの関係はどう変わりましたか。

日本のイスラエルへの理解度がずいぶん増したと思います。最初は中東ひとまとめで、危険だとだけ思われていたのですが、2015年1月の安倍首相のイスラエル訪問以降、両国間のビジネスはますます発展しています。日本の民間企業のイスラエルへの投資は2011年に3億円だったものが、2015年には52億円、2016年は222億円あり、急速に増えてきています。

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それでもまだ日本のR&Dはほぼできていません。例えばイスラエルでは日本車がたくさん売れていますが、R&Dはまだまだなんです。

―― 日本のスタートアップで、イスラエルへ進出してくる企業もありますか。

ありますが、イスラエルのスタートアップと比べると本気さはまだこれから。イスラエル企業は日本市場に本気で入ろうと思ってやってきますよね。

 日本は大手企業だからこその良さもある

―― 日本でも働き方の多様化志向が見られていますが、日本人の親には、子供を起業家にしようという人はあまりいないようです。

日本でも起業家が増えてほしいと思う反面、みんなが起業すればいいというものじゃない。大企業の中で活躍すれば、もっと大きく動かせるわけですから、スタートアップよりも良いこともあります。

 日本市場へ進出するための鍵

―― 日本企業とのコラボレーションを目指しているイスラエル企業からはよく、うちの技術を欲しいとは言うが、日本企業は実際の取引きになかなか進展しないという感想が聞かれます。企業のトップが認めても技術担当者がついてこなかったり、技術者が欲しがっても、トップがテクノロジーを理解しなかったり。

パートナーになってくれる日本企業を見つけるのが難しいというのは、交渉相手を間違っている場合が多いです。イスラエルのスタートアップの場合、最適な交渉相手とは、CTOの直下あたりで、決定権を持っている人でしょう。そういう人を探し当てて交渉しないといけません。

イスラエルから見れば、なかなか動かないと言われる日本の大企業でも、適切な相手と話せば、数カ月以内に多額のプロジェクトが動くことだってあります。そういう決定権を持った人と話すことです。

 逆に、イスラエルの技術を欲しい日本企業の中でも、真剣なところは自腹を切ってやってきますよ。

投資家になったきっかけ

―― 今は投資家として活動されていますが、そもそも投資家になろうと思われたのはどうしてですか。

国内のベンチャーでの経験のほかに、カンボジアへボランティアに行った経験があって、それにとてもやりがいを感じたことがあります。お金を追って仕事をしても、一度お金を手に入れてみると、それが究極の目的にはなり得ないことがわかりました。

社会をよりよくしたいと考えたときに、私が会社を一つ起こして社会に影響を与えるよりも、投資家なら複数の起業を支援して、一度に100人、1,000人単位で人を動かすことができる。その方が社会に影響を与えるスピードはずっと速くなります。基本的にはもっと会社が増えれば、社会が豊かになる。そうなると一般の人の生活も豊かになって笑顔が増えると思っています。

サムライの描く未来像

「それでは、この先の夢を教えてください」とお聞きすると、すかさず「ノーベル平和賞です」と答えが返ってきました。「獲れますか」と聞くと、「獲れます」と。実はこの答えの意味しているものは、その先にあったようです。

多くの現実問題を原動力に新しいものを産み出していく、愛国心溢れたイスラエル人と、戦後70年、安定した平和な国を築き上げながらも、ドライさもある日本人。正反対の相手から、お互いに学べるものは多いのかもしれません。

最後に榊原さんは、ノーベル平和賞ならぬ「サムライ賞」を作って、世界をより良くした人に贈りたいといつもの笑顔で結びました。まさにその笑顔で世界を結びながら、日本のサムライは国境を越えてさらなる世界へと羽ばたいて行きそうです。                          (2017年5月 シャヴィット・コハヴ)

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ビジネスサービスプロバイダー、ヴェレッド・フェルベルさんインタビュー

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前在イスラエル日本大使と

こんにちは!イスラエルのコハヴです。今回は、2000年にThe Asian Institute社を創設、現在CEOとして、日本とイスラエル間のビジネスを取り持っているヴェレッド・フェルベルさんから、今やイスラエルの輸出の主要部分を占めるようになったハイテク産業の実情についてお伺いしました。

――まずThe Asian Institute社の事業内容を教えてください。

日本とイスラエルが文化やビジネスの仕方の違いを超えて、スムーズに取引できるよう、両国間のビジネスコンサルティング事業をしています。相手国のビジネスパートナーを探したり、アジアで交渉する方法をコーチングするといったような、ビジネスマンのトレーニングもします。その他にも日本語を含むアジアの言語の翻訳サービスや、日本語・韓国語・中国語の語学講座も開いています。

――これまで数多くの企業間の架け橋役をしてこられましたが、今はどんな分野が多いですか。

最近は9割以上がハイテクですね。イスラエルは革新的な技術を次々と生み出していますから、日本企業が必要な技術を探しに来たり、日本市場への進出を目指すイスラエル企業に、日本のパートナーを探すお手伝いをしたりしています。

――ヴェレッドさんは、どのような経過で起業に至ったのですか。

日本との出会いは、偶然でした。友人と行先を決めないアジア旅行へ出た時に、日本にも立ち寄ったんです。他のアジア諸国とは全然違っていて、文化も食事も、人々の尊厳もすっかり気に入りました。2度目の来日では国際協力機構広尾センター(当時)で日本語を学び、結局7年間滞在しました。イスラエルへ戻ってから、日本との関係を続けられる仕事をしたいと考えて、起業しました。

――イスラエルのIT技術は引く手あまたですが、具体的にどのような分野に需要がありますか。

イスラエルの技術で世界の最先端と言われているものには、サイバーセキュリティ技術、AI、医療や農業のバイオテクノロジー、人間の頭脳の研究などがあります。癌の新しい治療法の開発もありますよ。

――イスラエルのハイテク界の女性は、いかがでしょう。

女性にも兵役がありますから、だいたい20歳くらいからIT技術を学び始めてキャリアを積んでいきます。起業は、27~28歳くらいでする女性が多いようです。女性ハイテク労働者のミートアップも行われていて、今ネットワーク作りがとても盛んです。

――起業を考えている女性に、何かアドバイスがあったら教えてください。

そうですね、失敗を恐れないことです。失敗や成功の実体験からだけ、物事は学べるものですから。それからキャリアのために結婚・出産などを先延ばしにしたり、諦めないでほしいと思います。女性起業家は周囲の助けなしには無理ですから、助けを得ればいいのです。

――ヴェレッドさんは、マラソンランナーとしても知られています。

ここ8年ぐらい、ハーフマラソン(21.5キロ)を走っています。いつもは音楽をかけて海岸を走るんですが、いいアイデアも浮かんできますし、走るために体も整えなければならないので、食生活も健康になります。走ることは私のセラピーなんです。

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マラソン競技会で、右から2人目

インタビューを終えて

昨今中国のイスラエルへの投資が積極的になっていることについて、ヴェレッドさんは、それでもイスラエルが求めているのは日本なのだと言います。日本とイスラエルの間には何か特別な絆があると、彼女は信じてやまないようです。

http://japan.girlsintech.org/#blog

 

イスラエルの女性起業家、 ショシ・カガノフスキーさんインタビュー

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ショシ・カガノフスキーさん

初めまして。「スタートアップ大国」イスラエル在住ライターのコハヴです。日本のハイテクに携わる女性の皆様に興味を持っていただけそうな記事をお届けしたいと思っています。よろしくお願いします。

さて、現在イスラエルでハイテク産業に占める女性の割合は35.5%。シリコンバレーでは女性エンジニアが20%、管理職が11%と言われますから、男女間の格差はイスラエルの方が小さめです。

それでもやはり珍しい存在と言える、ハイテク界の若手女性起業家ショシ・カガノフスキーさんに今回はインタビューを試みました。ショシさんは、エネルギー部門のスタートアップSensoLeakの創設者兼CEOとして現在、クライアントと会うために、年間200日は世界各地を飛び回る多忙な女性です。同社はイスラエルを皮切りに世界に26社の顧客を持ち、潜在的な顧客へのパイロットプログラムも複数展開しています。

――まずSensoLeakという会社は、何をする会社なのか教えてください。

当社は、石油漏れ、ガス漏れ、水漏れなどを探知したり、それが起きそうなところを事前に探し当てるテクノロジーを扱っています。探知精度は100%。既存の方法では探知までに時間がかかるために生ずる多額の損失を防ぐことのできる、世界唯一の技術です。

――それは、石油などのパイプに取り付けるものですか。

いいえ、ビッグデータ解析を使ったソフトウェアです。取り付けの必要はありません。そして何にでも応用が利きます。

――何にでも応用、というと?

たとえば風力タービン市場にも適応できます。タービンにあるごく小さな問題も検知して早期に対応するので、大きな被害を未然に防ぐことができます。

――ということは、ショシさんは技術関係を学ばれてきたということですよね。

いいえ、イスラエルのハイファ大学では、英文学とアジア研究で日本語を学びました。日本にとても興味があったんです。特に漢字の勉強が好きでしたね。

――文科系の出身で、どうやってこのようなスタートアップを創ることができたのですか。

私は教職もとっていて、16歳から外国語としての英語などを大人や子供に教えてきたのですが、教えること自体は好きでも、何か物足りなさを感じていました。それである時思い立ってMBA(経営学修士)を取ったんです。そのあとコンサルタントとして働きましたが、ちょうどこの技術を持った人と出会って、彼には技術はあってもマーケティングの術がなかったので、いっしょにやることにしました。必要な技術はすべて独学しました。コーディングなどもインターネットで。

――独学ですか。すごいですね。どのような家庭で育たれたのですか。

私は小さいときにロシアから、母と姉といっしょにイスラエルに移住しました。父はすでに亡くなっていました。母は14歳で医学部に入って、外科医として20年の経験を積んでいましたが、イスラエルに来るとまずヘブライ語から学び直さなければなりませんでした。その後も試験などがあり、結局医師として働くことができずに、幼稚園の経営をしました。

私は9歳から母に代わって家計を担当するような子供でした。姉はそういうことに興味がなかったので。母はロシアで親たちがするように、私に才能を伸ばすようなことを色々やらせてくれました。

――起業家でいると、世界を旅することが多かったり、何かとストレスも多いと思うのですが、それでもあなたを起業に駆り立てるものは何でしょうか。

もともと好奇心が強くて、何もしないでいることができない性格ですし、挑戦することが好きなんです。今の会社の前にも二つスタートアップを起こしています。起業家としては、世界をより良い場所にしたいという使命感がありますし、難しいことを乗り越えた時の感覚は格別です。

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――日本企業ともすでに会話を持たれているということですが、印象はいかがでしたか。

エネルギー業界では欧米にも同じ傾向がありますが、日本ではどこの会合もまったく男性ばかりでした。私の名前から男女の判断ができないらしく、このようなソフトウェアを扱っていることで、最初は男性と間違われることもよくあります。

――身長も高いですね。

ええ、180センチ以上ありますから、ハイヒールを履いて写真を撮ると私の方が男性より背が高くなってしまうこともあります。

――男性顔負けといったところですね。では最後に、独立したいけれども踏み出せないでいる女性エンジニアに出会ったら、どんなアドバイスをされますか。

起業には、まずやるぞと決心することです。そこからすべてが始まります。恐怖心が問題ですから。新しいベンチャーを始める前には、市場や潜在的な競争相手、資金調達など周囲の環境に臭覚を研ぎ澄ますことをお勧めします。

インタビューを終えて

「臭覚を研ぎ澄ます」という表現が、大の犬好きのショシさんに何ともぴったりでした。

エネルギー界は中間層のいない業界ということで、若い人には技術を理解してもらえても、決定権のある管理職には分かってもらえない、あるいはその必要性を理解してもらえないという苦労があるとのこと。しかしそんな苦労も楽しんでいるかのように見える彼女。バイタリティあるイスラエルの若手女性起業家として、この先の活躍がますます楽しみです。